教育行政執行方針

1 はじめに

 令和5年第1回定例会の開会にあたり、別海町教育委員会の教育行政の執行に関する主要な方針を申し上げます。
 
『第7次別海町総合計画』のめざす将来像の実現に向け、新時代を見据えながら、新しい時代に求められる教育環境づくりに向けたマネジメントの充実に努めます。とりわけ子どもたちには、「ふるさと べつかい」を学び舎に、相手の気持ちになり多角的に考える力の育成や意思疎通を高め、コミュニケーション能力の向上を目指す教育を実践します。
  そのために、これまで以上に学校と教育委員会の連携を強化することで、時代の変化に柔軟かつ的確に対応しながら、情報共有はもちろんのこと、縦と横の連携を強化し、組織として躍動します。

2 教育行政に臨む基本姿勢

 続いて、教育行政の執行に臨む基本となる姿勢を3点申し上げます。
 
 1点目は、「チーム力向上の取組の推進」です。
 これまで以上に本町の教育活動を推進させるため、共通の目標を設定するとともに役割を明確化することで、共同作業を通じてその実現を目指します。
 また、コミュニケーションを円滑化し、協力体制を向上させることによって、チーム力向上の取組を推進します。

 2点目は、「つながりを大切にするコミュニティ・スクールの促進」です。
 これまで各地区において推進してきたコミュニティ・スクールの取組をより一層充実させ、地域と学校が一体となり、学びや育ちの支援を強化させていきます。
 また、そうした取組と連動させながら「ふるさとキャリア教育」の充実を目指します。
 
 3点目は、「特色ある学びの推進」です。
 本町では、生涯学習の観点から策定した「学びの木」を軸として、すべての町民が自分らしく学び続け、「輝く笑顔」や「豊かな心」で生活する姿を目指した教育を推進するところに特色があります。

 学校を中心とした子どもの学びはもとより、授業では、児童生徒の学習意欲を高める楽しい「学び合い型授業」を実施することで、納得感や自己有用感を養い、将来に向かって探究的な学びができる子どもを育成します。
 また、「まちづくり」に直結する学びにおいても、互いの「学び合い」を通じて相手の気持ちを理解し、異なる立場で多角的に考え、リーダーシップやフォロワーシップのもと、個々が主体性をもって協働的な学びが展開できる教育の充実を図ります。

3 主要施策の推進

 次に、「第7次別海町総合計画」を基に、重点的に取組む施策を申し上げます。

(1) 生涯にわたり学ぶ社会教育の推進

 1点目は、「生涯にわたり学ぶ社会教育の推進」についてです。
 生涯学習の核となる生涯学習センター「みなくる」が供用が開始されました。
 今後は、今の時代・新しい時代に求められる教育環境を、世代間を超えて町民と共に創り上げていきます。

 すべての町民が、生きがいを持って暮らせる社会を実現するために「みなくる」、「青少年プラザ」と「ぷらと」の3館連携を積極的に図りながら、町民が主体となり活力ある地域コミュニティづくりを通し、生涯にわたって学ぶことができる環境づくりを進めます。
 さらに、各公民館で実施する小学生を対象とした「アドベンチャースクール」をはじめとする青少年スクール、「寿大学」などの各種講座・教室を通じて、いつでも、どこでも、誰でも学べる環境の充実を図ります。
 また、よりわかりやすく、身近な情報を提供するとともに、世代間を超えた講座やイベント、教室等の実施を積極的に推進します。

 図書館では、乳幼児期から本に親しむため、「ブックスタート事業」を継続し、「赤ちゃんタイム」を設定して親子で利用しやすい環境整備を図るとともに、障がいの有無に関わらず、文字・活字文化の恩恵を受けられるよう、大活字本や布絵本等の配置を進めるなど、町民のニーズの多様化に対応するよう努めます。
 学校図書室については、学校と連携し環境整備を進めるとともに、授業で使用する資料の貸出や「わくわく読書会」などの学校訪問事業を実施します。
 また、「移動図書館車」の運行や上西春別中学校に設置している「地域開放型図書館」の充実に努め、読書率の向上を図ります。
 さらに、郷土についてより深く知るための地域資料を積極的に収集するとともに、後世に良好な状態で保存するためのデジタル化を進めます。

(2) 生きる力を育む学校教育の充実

 2点目は、「生きる力を育む学校教育の充実」についてです。
 目まぐるしく変化する社会の中で、子どもたちが「生きる力」を身に付け、ふるさとを担う気概と能力を備えた社会人に成長できる教育の充実を図ります。

 子どもたちは、地域の人々と触れ合い、様々な体験を重ねる中で自尊感情を高め、地域に貢献しようとする志が育まれていきます。町内全8学校区で実施している「コミュニティ・スクール」の取組を充実させながら、地域での学びが学校で、学校での学びが地域の中で発揮される「ふるさとキャリア教育」を推進します。

 学校教育の一層の充実を図るため、「小中一貫教育」を推進します。義務教育9年間の学びを切れ目なく展開し、地域の実情に応じた学校の在り方について検討を続けていきます。
 また、「架け橋期」のカリキュラムの充実を図るとともに、別海高校との連携をさらに強化し、本町に学ぶ子どもたちの「学びの連続性」を確かなものにしていきます。
 
 「別海町生きる力アッププロジェクト事業」は、第3次の成果を踏まえ、「ふるさとキャリア教育」の充実や「学び合い」による授業改善を目指して、秋田県大館市に本町教員を派遣します。
 また、「学びの土台づくり」として、「別海町ビブリオバトル」を核とした読書活動を推進するとともに、「別海町新聞の日」には、児童生徒一人ひとりに新聞を配布するなど、新聞や新聞を素材としたデジタル教材を積極的に活用し、読解力を中心とした子どもたちの資質・能力を高める取組を継続します。

 子どもたちの非認知能力に着目し、その重要な育成期である幼児期における教育の充実や、非認知能力を生かした教育活動の充実を図り、子どもたちの主体性を育む学校教育が展開できるよう、教職員の研修機会の拡充に努めます。
 
 「別海版GIGAスクール構想」の実現に向け、授業や家庭学習等の場面において、一人一台端末の効果的活用を図り、個別最適な学びと協働的な学びの幅を広げていくことにより、Society5.0時代を生きる子どもたちに必要な力を身に付けさせます。

 不登校やいじめ問題の解決に向け、スクールカウンセラー、「ふれあいるーむ」指導員、スクールソーシャルワーカーの積極的に活用し、学校と連携した教育相談を継続します。
 また、「ふれあいるーむ」のサテライト機能を活用し、不登校やいじめの解決に向けた対応の充実を図ります。
 
 特別支援教育においては、支援を必要とする児童生徒が増加傾向にある中で、通級指導教室の充実を図り、個々の特性に応じた教育の実現を目指します。
 また、現状の特別支援教育支援員の規模を維持して充実した支援を行います。

 英語指導助手ALTについては、英語の発音はもとより、英語を介したコミュニケーション能力の育成や国際理解教育を向上させ、相乗効果により更なる英語教育の充実を図ります。
 また、幼稚園訪問を引続き実施し、心豊かな子どもの育成を目指します。
 
 自律的な学習に向かう姿勢の育成を図るため、引続き、漢字検定、英語検定、算数・数学検定の受検料を助成し、キャリア教育の推進を図ります。
 また、タブレットドリルを導入することで、子どもたちの主体的な学びを支援します。
 
 学校給食センターでは、子どもたちが将来を通じて、健全な食生活を実践できるための「食育」を、各学校と連携し進めるとともに、郷土の食材や食文化への関心を高めるため、地産地消等にも努めながら、安全な学校給食の提供を行います。
 また、食物アレルギーを有する児童生徒にも、学校給食を提供するために、食物アレルギー対応の大原則に基づき、安全性を最優先し、品目を限定して提供を行います。
 
 子どもたちへの効果的な教育活動を行うために推進している「学校における働き方改革」は、学校閉庁日の拡充、部活動休養日の完全実施などの取組を継続実施するほか、在校等時間の分析結果を基に検討した実効性のある新たな取組を実施します。
 また、部活動地域移行に向けて、調査・研究を進めます。
 
 地域を担う若者の育成においては、別海高等学校の普通科生徒及び酪農経営科生徒の確保・増員を目的として、各種支援事業を継続実施し、地域に根ざした高等学校教育の支援を行います。

(3) 郷土愛と社会性を育む青少年の健全育成

 3点目は、「郷土愛と社会性を育む青少年の健全育成」についてです。
 本町の次世代の担い手となる、青少年に豊かな社会性と「ふるさと べつかい」への郷土愛を育むため、時代にあった施策を推進します。
 
 ふるさと教育では、学校や地域と連携した中で、「郷土資料館」や「みなくる」等の社会教育施設と地域人材を活用しながら郷土愛を育む教育の更なる充実を図ります。
 
 青少年の健全育成と生活習慣の改善においては、町独自の「メディアコントロールシート」を活用し、子どもや、その家族が主体的に、今の時代に合うメディアとの付き合い方を考え、実効性のある取組を進めます。
 別海町生涯教育研究所において、児童生徒等の生活実態の調査研究を行い、今後の施策決定に必要なデータ収集に取り組みます。
 また、新たな時代にあった青少年事業を実施するため、積極的に中高生の参加機会を設け、社会性を育む人材育成を図るとともに、青少年プラザの在り方などの地域課題の解決につながるまちづくり活動の促進を図ります。
 成人年齢の引き下げに伴う教育的な取組の実施について、具体的な検討を進めます。

(4) 地域に根ざし個性あふれる地域の芸術文化の振興

 4点目は、「地域に根ざし個性あふれる地域の芸術文化の振興」についてです。
 地域における芸術文化の振興は、別海町文化連盟をはじめとした各団体への支援や、地域との連携により地域の芸術文化の振興を図ります。貴重な文化財や本町の歴史を学び、理解を深める機会の拡充を図り、郷土愛の高揚に努めます。
 
 本町には、各地域に様々な文化財があります。これらの文化財を幅広く把握し、保存活用の方針を具体化・具現化するため、「別海町文化財保存活用地域計画」の策定を進めます。

 史跡旧奥行臼駅逓所をはじめとする奥行地区文化財は、これまで道内外から多くの方々が見学に訪れています。引き続き、積極的な情報発信を行うとともに、「夏休みトロッコサンデー」や「奥行臼散策デー」を開催するなど、地域の文化財を学ぶ機会の拡充に努めます。
 さらに、3つの異なる交通遺産が集中する奥行地区を歴史観光スポットとして活用するため、「奥行臼史跡公園の整備基本計画」を策定します。
 
 郷土資料館は、施設の老朽化が喫緊の課題となっており、整備方針について協議を進めてきましたが、今年度からは、学識経験者等で構成する整備検討委員会を設置し、更なる検討を進めます。
 また、加賀家文書館は、アイヌ政策推進交付金事業を活用し、整備と充実を図ります。
 町の歴史、文化や自然に関わる資料の収集、整理保管、調査研究を引き続き進め、「ふるさと講座」「郷土学習出前講座」や「出前移動展」を積極的に開催します。

(5) 活力に満ちた地域をつくるスポーツの振興

 5点目は、「活力に満ちた地域をつくるスポーツの振興」についてです。
 すべての町民が、幼少期から生涯を通じてスポーツを楽しみ、健康づくりができる「町民皆スポーツ」の実現をめざします。
 そのために、スポーツ協会等と連携をし、地域の特性やスポーツ施設を有効活用した、いつでも、だれでも気軽にできる、スポーツの普及を図ります。

 スポーツイベントや町民のニーズに合わせたスポーツ教室を通し、人と地域のつながりを深めるほか、能力・適性・興味などの多様性のあるスポーツ活動を気軽に選べる機会を提供します。
 また、少年団等の指導者の育成と支援を行うことで、スポーツの振興とスポーツによる町づくりを進めるとともに、別海町スポーツ選手後援会とも連携を図り、スポーツの発展に努めます。
 
 別海町パイロットマラソンは、新型コロナウイルス感染症対策を講じながら3年振りに開催しました。今後もスポーツ交流による人づくりと町づくりを促進するため、令和5年10月1日の開催に向け、多くのランナーの参加が得られるよう準備を進めます。
 以上が、令和5年度に取り組む重点施策となります。

4 むすび

 教育行政執行方針の実現には、地域・学校・家庭・行政が一体となり、「チーム力」を向上させて町ぐるみで取組を進めていくことが必要です。
 
 別海町教育委員会は、「ふるさと べつかい」を担う気概と能力を備えた社会人に成長できる教育、「ふるさと べっかい」に貢献しようとする志をもった町民の学びを実現するための施策を推進します。

 依然として続くコロナ対応や、一層多様化・複雑化するさまざまな教育課題への対応が求められる大変な時代ですが、勇気と知性を持って臨めば、ワンランク上のものを次の世代に引き継ぐことができます。

 一つ一つの疑問を多様な方面から考察して切り開き、攻めの姿勢で課題解決に向けて取り組んでいくことをお誓い申し上げ、教育行政執行方針といたします。