地域研修を終えて(令和7年9月)

 1か月間という短い期間でしたが、先生方やスタッフの皆さんに温かく迎えていただき、とても充実した時間を過ごすことができました。本当にありがとうございました。普段の大学病院での研修とは異なる環境に身を置くことで、これまでの自分の視野の狭さに気づかされると同時に、地域で働く医師に求められる役割の広さを実感することができました。
 
 この研修でまず印象に残ったのは、都市部ではなかなか経験できない症例に数多く触れられたことです。馬に引っ張られて外傷、牛に踏まれた骨折、酪農に従事する方の下痢症例など、一次産業に従事する方々の生活に直結した疾患を実際に診療しました。病気やけがは生活や仕事と切り離せないものであることを強く実感し、地域の特性がそのまま医療に反映されている現実を肌で感じました。また、人口に比べて医師数が限られていることも印象的でした。専門的診療が必要な場合には釧路まで搬送が必要であり、患者さんやご家族にとっては大きな負担となります。その中で、まずは自院で初期対応を行い、必要な場合に適切な医療施設へ搬送する判断力が求められていることを学びました。町内の診療所を見学した際には、尾岱沼・西春別共に医師が1人で地域全体を支えており、都市部の病院では見ることのできない地域の現状を目の当たりにしました。こうした環境下で医療を担う医師の責任の大きさと、自分一人で住民の生活を支えていくという強い使命感を感じ感銘を受けました。
 また、内視鏡検査を多く経験できたことも大変貴重でした。大学病院でも研修医が内視鏡を触らせてもらえる機会はありますが、研修医やレジデントの人数が多いため、1人に割り当てられる症例はごく限られています。今回の研修ではほとんど全例を自分で触らせていただき、胃カメラや大腸カメラを実際に操作できました。最初は手技の難しさに戸惑いましたが、回数を重ねる中で少しずつ感覚をつかむことができ、内視鏡の奥深さと面白さを強く実感しました。消化器内科を志望する自分にとって、この段階で多くの症例を経験できたことは非常に大きな意味があり、今後の専門研修に向けて大きな自信につながりました。また、介護認定審査会議に参加できたことも非常に学びになりました。患者さんが院外でどのような介護サービスを受けられるのか、その流れを知ることができ、医療と介護が切れ目なくつながっていて患者さんの生活を支えていることを学びました。診療だけでなく介護や福祉との連携も含めて「地域医療」であるということを強く実感しました。
 この1か月の研修を通じて、地域医療に必要な力について改めて考えるようになりました。幅広い疾患にまず対応できる総合的な力、多職種や行政とも協力して患者さんを支える力、そして限られた資源の中で最善を尽くす柔軟な判断力。これらは都市部の研修だけではなかなか身につかない力であり、今回の経験を通じて自分に不足していた部分を意識することができました。将来は消化器内科を専門にする予定ですが、専門性を追求するだけでなく、患者さんの生活背景や地域の事情を理解し、その中で最も適切な医療を届けられる医師を目指したいと考えています。内視鏡、消防署での体験、介護認定審査会議への参加など、どれも自分にとって非常に貴重な経験でした。この学びを糧に、今後も研修に励み、一人前の内科医として成長していきたいと思います。最後になりましたが、別海病院でお世話になった先生方、スタッフの皆さんに改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。