挨拶 ~ 病院長から ~

西村院長
 町立別海病院は、長らくの念願でありました新築移転オープンを平成24年10月1日に迎え丸5年を経過しました。
 これまでの地域住民等を含めた皆様のご協力に厚く御礼申し上げます。

 ここ根室医療圏は、人口当たりの医師数が極端に少ない地域です。それは医師だけでなく、薬剤師、看護師などの医療スタッフも不足しています。その中での病院運営は、苦労の連続です。この広い別海町内には、民間の医療機関はなく、公設の尾岱沼・西春別診療所の他、この町立別海病院だけです。その使命として365日、24時間、救急患者を受け入れ、かつ出産、予防医療、検診、外来も入院、そして看取りの緩和医療を行っています。
 地域医療を支えていくのは、決して派手なことではなく、地道に患者さんや家族の方の視点に立った医療を繰り返していくことです。「公」の病院として、医療の根幹である「生・老・病・死」を基本に考えています。

 まず「生」ですが、小児科医や助産師などの努力により、別海町では合計特殊出生率1.86と、道内の市町村で2位という数字を誇っています。

 次いで、「老」。増え続けている認知症に対応するため、精神科医による心療内科、精神科診療を週3回行われています。

 「病」については、2人に1人は癌になる時代です。がん診療に積極的に行っています。また、初期救急治療のほか、高次医療機関への紹介が必要な場合は、ドクターヘリを活用して救急医療にも対応しています。
 
 そして「死」。介護する家族に負担をかけることなく、安心して最後をみんなで見送れるよう、心のこもった終末医療を行っています。

 平成29年度からは、「眼科」を廃止し、「整形外科」を新たに標榜して、高齢化の一つの問題でもある地域住民の身体的な肩・腰・膝への問題に対応し、住民ニーズへ応えるべく病院経営を行ってきております。 
 
 デフレ・不況がつづく現在、増え続ける医療費も大問題です。別海町では、予防医療に対しても力をいれ、高齢者への肺炎球菌ワクチン摂取率を高める努力を行っています。また子宮頸がんワクチン接種率に関しては87%と、日本のトップレベルの実績をつくりました。 別海町は、北海道の市町村比較で、一人当たりの医療費、地域差指数としても、ランキング1,2を争う医療費の少ない町です。これは道内の医療費の高い市町村の約半分の医療費です。
 病院は、もともと病気や怪我で困っている弱者が、教会などに集まり、慈善事業として始まった歴史があります。こうした生老病死に関わることこそ、本来の医療のはずですが、昨今の日本は、医療にも市場原理主義、経済優先とする状態であり、いつ起きるかわからないこうした生、老、病、死に向き合う医療は、都会の専門分化のすすんだ医師達には、どうしても敬遠しがちであることも地方の医師不足の原因の一つだと思います。病院の評価基準に関しても、地域でこうした分野でいかに貢献しているかではなく、経済中心のものが主流です。

 地域医療を支えていくのは、決して派手なことはなく、地道に、患者さんや家族の視点にたった医療の提供の繰り返しです。
 
 別海病院の基本理念としては、
「地域の病院として、心のこもった医療で住民の皆様の健康を支援いたします」
「安心、信頼、質の高い医療の提供、保険、医療、福祉、介護の地域連携」

です。

 我々、職員一同、この新しい公共財産である新病院の中で、新たなる決意をもって、さらに頑張り、安心、安全の街づくりに貢献いたします。
 
 住民の皆様のご理解とご協力を今後も賜りますよう、お願い申し上げます。

  平成30年4月1日
町立別海病院 院長 西村 進